【独自研究】世の中にいい事業は儲からない!その理由と対策

環境に良い製品って高額だったりして、消費者としてはなかなか購入に至りませんよね。
SDGsや働き方改革など、今後ますます社会的価値の高い製品・サービスが求められてきますが、企業はどのようにして社会的価値と自社の利益を同時獲得していけばいいのでしょう??

<補足説明>
・社会的価値:環境、エネルギー、リサイクル、資源、生物多様性、安全、インフラ、雇用といった産業活動における社会基盤を指し、近年はSDGsや再生可能エネルギー、働き方改革など新しい価値観が人々の間で生まれてきている。
・経済的価値:自社における企業利益を指す。ここでは売上高を増大したり、原価を削減することで経済的価値を増大することを目指している。

まず初めに、世の中にいい事業がなぜ儲からないのか、その理由について検討してみます。

p.1の図をご覧ください。
例えば、①環境に良いからという思いでリサイクル材を多く採用したら、製品原価が上がってしまったが、販売価格に転嫁できなくて困っている。
②顧客要望に従い性能向上した製品を開発したが、今までよりも多くの製造エネルギーが必要になってしまい、省エネに反する価値観になってしまった。
こうした事例は製造業に限らず、サービス業でも小売業でも身近な問題として存在すると思います。
社会的価値を高めれば自社の経済的価値が下がってしまう。逆に、経済的価値を高めれば社会的価値が下がってしまう。
そうです、社会的価値と経済的価値がトレードオフの関係になっているのです。(マクロ経済学における需要曲線と同様のメカニズムだと考えています。)
これが、「世の中にいい事業は儲からない」ことの理由になっているのです。

次に対策について検討します。すなわち、世の中にいい事業で儲けるためにはどうすればいいのか。

一つ目は自社内で出来ることに目を向けました。p.2をご覧ください。
それは、従来の発想を飛び越えた目標値を持つことです。社会的価値でも経済的価値でもいいので、従来の延長線では考えられないような取組みをすることです。思い切った目標値を持って取り組むことができれば、大きく価値増加できるだけでなく、他方の価値低下もそこそこで抑制できるはずです。なぜならば、従来にない取組みをしているので、従来のフロンティアラインを突破する可能性が高まっているためです。そうした取組みとしては、異業種企業との連携や大学との共同開発など、オープンイノベーションがその参考になるかもしれません。

2つ目は外部環境の変化に目を向けました。p.3をご覧ください。
それは、政策・税制の変化を利用することです。
少し前ですとSDGsや働き方改革、エシカル消費。最近ですとコロナ感染、ロシア侵略、周辺国との領土問題などによって社会的価値観が変化し、それに伴い政府による政策改定が行われることになります(すでに一部は実施済み)。産業界ではこうしたルールチェンジによって従来の社会的価値の優先度が変化します。
また、一時的な補助金や助成金の強化だけでなく、法人税率の見直し、カーボン税の導入など恒久的な税制改正によって企業利益が変化します。これらの変化は、ちょうどこれまでの社会的価値と経済的価値の軸を上下、左右にシフトするイメージになります。もちろん、自社にとって有利になる場合も不利になる場合もありますが、こうした社会的価値の基になっている世の中の価値観の変化、および経済的価値の基になっている税制の変化を上手く利用して、メリットを最大化したりデメリットを最小化するなどして、見かけ上のフロントラインを右上へ引き上げていくことが求められます。

以上、「世の中にいい事業は儲からないのか?」という疑問について、その理由と対策の方向性を整理してみました。特に、対策は自力ではなかなか十分な対応はできないと思います。思い切った目標を実現するために、どんなオープンイノベーションをすればいいの?世の中の価値観の変化はなんとなくわかるけど、具体的に自社にどのようなメリット・デメリットが考えられるの?一体何から始めればいいの?

このような時にこそ、中小企業診断士の力が発揮されますので、ぜひお近くの診断士に相談してみて下さい。もちろん、ご縁があれば私も協力させていただきます。