大手自動車メーカーが合併できないのは、電気自動車開発が進まない理由と同じ!?

日産とホンダの経営統合の話が白紙になりましたね。日産の負債の大きさや事業計画が不十分、またホンダ子会社化の提案を日産が反発したなど、様々な理由が挙げられています。しかし、私のトヨタ経営企画の経験から言わせてもらえば、そもそも日産とホンダの経営統合など、ありえないということです。その理由を簡単にお伝えしようと思います。

トヨタでも自動車の共同開発の話が何度もありました。私がいた期間だけでもマツダ、富士重、BMWなど。こうした交渉でいつも議論が暗礁に載ってしまうのが、車両のプラットフォームの話です。どちらのプラットフォームを使うのか、です。プラットフォームはエンジンやサスペンションなどの足回り、燃料タンクやハイブリッドシステムを載せるための土台とでもいいましょうか。そのプラットフォームは、自社の他の車両でも使えるように小型車、中型車、大型車で共通にすることが一般的です、なぜプラットフォームを共通化するのかというと、先ほど挙げた部品の共通化だけでなく、各国で規制されている安全基準をクリアするための車両衝突試験の回数を減らすことができるからです。この衝突試験は、実際に車両の正面や側面から高速で物体をぶつける試験で、車両のみならず搭乗者の人体モデルを使って何度も何度も繰り返し実験します。ですので、衝突実験は1モデルだけでも数百万以上の費用が掛かっており、最近はシミュレーションを多用していますが、まだまだ衝突試験の費用負担は大きいです。

このプラットフォームを自社のものを使えるか、相手先のプラットフォームを使うかで、大手自動車メーカーはモデル数にもよりますが、数十億円から数百億円の費用負担を強いられることになります。また、それだけでなく、プラットフォームは大手自動車メーカーにとって、これまでの技術蓄積の証ようなもので、はいそうですか、と簡単に変更したがりません。衝突時にどの部品でエネルギーを吸収するか、キャビンはどの程度守るのか、といった設計思想そのものが異なり、大手自動車メーカー同士の協議では妥協点を見出すことは基本的に無理です。(すでに倒産した会社なら別ですが。)それと、プラットフォームが変わると、先の部品の構造を変えなければならず、設計の見直しだけでなく、部品メーカーにも設計変更による負担を強いることになります。この影響は計り知れない規模になるはずです。

このように大手自動車メーカー同士の経営統合は、車両のプラットフォームの違いから、非常に困難と言わざるを得ません。ですので、トヨタでもマツダ、富士重、BMWとの共同開発は、1モデルに限定されています。複数のモデルで共同開発を行おうとすれば、プラットフォームの問題が発生し、どちらかに大きな負担を強いることになってしまいますから。

実はこのプラットフォームの問題は、EV開発でも同じ問題を発生させています。EV専用のプラットフォームを開発しようとすると先のように衝突実験のために大きな費用負担があり、1モデルだけでは採算が取れません。とはいえ、EVモデルの大規模開発をするだけの市場は見込めない、というのがトヨタの判断です。そこで、トヨタでは既存のプラットフォームを改良して使用しています。エンジンとモーター、燃料タンクとバッテリーなど、部品が大きく変更されるにもかかわらず、既存のプラットフォームを流用していますので、EVモデルにとってプラットフォームがムダ・ムリな形状となっていることは否定できない事実です。EV走行距離、前後重量配分、前輪のロールが大きいなど、車両としても完成度の低さは言うまでもありません。

以上、大手自動車メーカー同士の経営統合は、技術的なプラットフォーム共通化の問題があり、実現不可能と言わせていただきます。もちろん、一方が倒産してしまえばプラットフォームは共通化せざるを得ませんから、その限りではありません。あと、日産の提携先として鴻海の名前が挙がっていますが、鴻海なら電子機器EMSですので車両プラットフォームの問題は発生しませんね。