中小製造業を診断する際の留意点③
前回、前々回に続き、第3弾です。今回は少し抽象度の高い内容になります。「変化」というワードを中心にお話しします。
診断士業界で知らない人はいませんが、経産省では事業再構築補助金で業種・業態・業容の変更による事業再構築を求めています。これって、そもそもダーウィンの進化論「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き残るのでもない。唯一生き残ることができるのは、変化できる者である。」という考え方ですよね。
SDGs、カーボンニュートラル、デジタル化などの社会的要請、高機能・高品質・低価格、フェアトレードなどの消費者市場からの要請、働き方改革(残業、育休)、賃金上昇などの労働市場からの要請。事業を取り巻く環境はどんどん「変化」してきています。企業はそれらに対応して変化しなさい、と言っているのです。
でも私は思うんです。そもそも製造業って「変化が苦手」な業界なんですよね。特に製造業の現場では、効率性や規模の経済が求められます。日々の生産量はなるべく一定にしたい、現場労働者の人数もスキルもなるべく一定にして多能工化を図りたい、機械や道具も使い慣れたものがいい。仕入れ先や物流業者を固定することで品質問題を回避したい。他の要素は一定である、という条件のもとで目的要素の最適化を図っていますので、複数の要素が変化しうる条件では、目的要素の最適化は図れません。製造業はこうして変化を排除することで効率性や規模の経済を実現してきているのです。
じゃあ、変わらなくてもいいかというと、ダメなんです。会社は社会の公器ですから、社会的要請も、消費者市場の要請も、労働市場の要請にも応えなくてはならないんです。
製造業の業務はそれぞれが複雑に絡み合っており、それらの変化を抑えることで目的要素の最適化を図っていますので、ある要素をだけを良くしても全体として悪くなるという「合成の誤謬」が起きやすいです。また、サプライチェーンも長く、複雑ですから自社の最適化が他社の犠牲の上に成り立つといった「外部不経済」にも注意が必要です。
製造業が変化を実現するための特効薬はありませんが、診断士として助言するとすれば、「客観的事実に基づいた分析を通じて、問題の真因を特定し、さらに効果的な対策の順序を検討する」ことです。即効性のある対策は実現が難しく、また対策には必ず副作用があると思ってください。「変化」への道のりは遠く険しいものとなります。定期的な計画見直しを忘れずに行ってください。
今回のお話しは以上です。これまで中小製造業に特化して、企業診断する際の留意点について持論を述べさせていただきました。まだまだ10以上のテーマについてお話できることがあるのですが、いったんここで区切りとさせていただきます。ご興味ある方は個別に連絡ください。お悩みの内容に応じてアドバイスできると思います。
以上、ここまでお読みいただいてありがとうございました。