中小製造業を診断する際の留意点①

自動車会社に長年勤務していたこともあり、日本の製造業の特質性(異質性ともいう)について知見がたまっているので、少し紹介したい。今回は、特に中小企業の目線で考えたい。

1.「仕事が無いよりまし」は危険
 ご存じのように国内製造業は、原材料の購入を海外に依存しています。金属もプラスチックも、レアアースも。また、石油や天然ガスなどのエネルギーも海外依存率が高いです。このような状況で、ロシアによるウクライナ侵略など地政学的リスクや半導体装置の中国輸出制限などの政治的リスクが極めて高まっており、製造業では原材料の入手困難、エネルギー費の高騰、お客様までのリードタイムの長期化など事業リスクが大きく膨らんでいます。
 こうした中で、中小製造業の経営者は「仕事が無いよりまし」と考えて、安価な受注に応えて生産し続けることを選択するケースがほとんどだと思います。現場の作業者の仕事が無くなると困る、顧客からの受注が途切れるのが怖い、生産していれば少しでも利益になっているはず、と考えてのことと思います。
 しかし、実際に中小製造業の診断をさせていただくと、6-7割の会社で営業赤字になっています。また、一部の製品については粗利さえも赤字の場合があるのです。原材料や光熱費の高騰によって利幅が取れなくなっていることに気付いている経営者様は少ないようです。
 中小製造業の診断をする際には、上記のことに留意し、経営者には「高利益率の製品製造へのシフト」、「新規顧客の探索」をするよう勧めています。